野次馬根性

野次馬根性といったら失礼だが、猪疑心が好奇心に変わり、やがてねぎらいの心へと変化したのだ。町の人々の度量の大きさもさることながら、小手うわて川氏は、さらに上手をいっていた。私が欧州旅行中に仕入れてきたドイッモダンのインテリア思想を話すと、再建中の自邸で活かそうと言うのである。多くの場合、二度と変なまねはさせないと身構えるはずなのに、私のスケッチを見て、自分で納得できると思ったことはみんな試させてくれた。たとえば、リビングの中央にしつらえた飾り棚。普通だったら、重量に耐える脚をつけ、下から支えるようにするのだが、小手川邸の飾り棚は、天井から吊りさげる構造になっている。暖炉だって、当時は部屋の隅にレンガを積んで造るのが普通だったが、天井から吊りさげるタイプにして、部屋の中央に持ってきた。その方が暖かいし、囲炉裏代わりになって人が集まってくるからだ。下の部分では、大きな肉の塊や串に刺した魚を焼くこともできる。私は、実際にドイツや北欧で、その住宅設計の思想が、たんなるデザインではなく、厳しい自然と地理的な環境の中で暮らすための知恵に裏打ちされた実質的なものであることをこの目で見てきた。小手川氏は、そういう合理的なものは、どんどん取り入れてくれたのである。建築家は、自分一人で成長することはできない。若い感性と情熱を信じ、その試みを、ときに制しながらも、柔軟に受け入れてくれる建て主によって育てられるのである。

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