■縁(えにし)と習作。真に合理的であるがゆえに美しいものを見せてくれたのは、ドイツをはじめとする欧州だった。そして、その渡欧の資金を与えてくれ、私の目を養わせ育ててくれたのが臼杵だったのである。ここに二つのグラスがあるとしよう。どちらもかなりモダンなデザインだ。一方は独特な珍しい形であったが、色調は渋く品があった。もう一方は、洗練きれたスッキリした形、しかし鮮やかな色調で、見ようによってはかなり派手ともいえた。都内のデパートでは、どちらも人気があり、売れ行きは半々だという。この二つのグラスを臼杵にもっていき、一○人ほどの知人に問うてみた。するとどうだろう。一○人が一○人、迷うことなく後者のグラスを選んだのである。しかも、はっきりとした理由があって、それがみなピタリと一致するのだ。つまり、前者は面白い。しかし、後者は持ちやすく、置いたときの安定性がいいというのだ。洗練されたスッキリした形というのはそういうことである。生活のために使用する道具は、あくまでも合理的に選ぶ。飾りや色はどうともなるが、使い勝手はどうにもならない。こうして私は、臼杵とその周辺の町に、以来五○軒以上の個人住宅、マンション、医院や工場を造らせていただいた。習作……といったら、あまりにも失礼なのだが、初期の建て主の方々は、みなさんそう思っていらっしゃるだろう。
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