「郷土」

もし湿気を制することができたら、それは日本の建築を制したといっても過言でないのかも知れない。最後に「郷土」とは、ふるさとのこと。日本人の誰もが潜在的に持っているふるきとへの志向である。故郷を遠く離れ、都会に出てきたとしても、郷里の友に会えば、必ず口をついて出るのがふるさとの言葉だ。「自分には、帰るところがある」。そんな心のよりどころがあるだけで、人はどんなに精神の平穏を保つことができるだろうか。これは海外に出ても同じで、こんどは日本が郷里となる。かっての私もそうだった。郷士への志向は、親への志向であり、ひいては家への志向でもある。住まいに使われる建築材料にも郷土志向がある。できれば輸入材を使わないで、なるべくならその土地、あるいは日本で生まれ育った木を使うのがいい。その土地で大きくなるまで育った木は、その土地特有の気候に適応することができるのだ。台風の多い地方で育った木なら少々の雨風にはびくともしない。豪雪地帯で育った木ならかなりの雪の重みに耐えることができる。木は切った後も死んでしまうわけではない。家につくられた後も、呼吸しながら生き続ける。生き続けて家を守ってくれるのだ。だからこそ、ふるさとの森を守り、木を育てることが大切なのである。いま、日本で、日本産の木材で家を建てようと思ったらどうだろう。とんでもなく高価なものになってしまう。

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