私は、その作品ひとつひとつの設計、建築工程で、悩み、考え、学び、育っていったのである。いま、私が建築家として存在することができるのも、小手川氏をはじめとする、伝統的な暮らしを守り、本物の思考をする、臼杵の建て主の方々のおかげである。■「国土」「風土」「郷土」。臼杵という、地方の小都市で、初めての設計に携わったせいか、はたまた、若くしてシベリアの大地から欧州へと這うように旅して、西欧かぶれの鼻っ柱を、台風にへし折られたせいか、私は、「国土」「風土」「郷土」というものに思いを寄せるようになった。泥臭いといわれるかも知れないが、文字通り、「二一つの土」への思いである。この「三つの士」は、私たちの住まいに課せられた、しかも欠かすことのできない要素である。そしてまた、住まいの快適性を生み出す私の設計思想の根幹ともなっている。まず「国土」というのは、まさしくわが国、日本のことである。日本は島国で、その国土は、人口に比較してかなり狭い。さらに中央集権型の国家機能は、都市への人口集中を加速させ、都心部の地価を跳ね上げた。一戸建てはいうに及ばず、分譲マンションですらも、普通のサラリーマンが手に入れることは、かなり困難になっている。それは土地神話が崩壊し、バブルがはじけた現在でもそう変わることがない。これを解消できないまでも、建築家としての思考と発想から、何かできることはないのだろうか。私は、そう考えるようになった。
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